愛知県美浜町のメダカ
栃木県メダカ里親の会の調査

千葉県四街道のメダカ
メダカは社会的生物である
第3号
2000.12.19発行(通算4号)

小学校高学年以上

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今回は今年訪れたメダカ生息地の現状報告と、関連して思うところをまとめさせていただきます。ご協力いただいた皆様、どうもありがとうございました。


■静岡県掛川市のメダカ
 事務局・小澤の出身地であり、高校時代の友人の早瀬さんがご家族で市内を調査してくださっています。そのうちの何カ所かを、お盆に案内していただきました。一カ所では、新幹線脇の農業用水(大井川用水という幹線用水が流れている。しかしその脇の水田より水位が低いので、排水が流れ込む構造になっています)に見つかったということで、脇の水路や水田をさがすと、無数のメダカが見つかりました。これだけまとまった数が生息しているのを見たのは久しぶりでした。その後の情報によると、上流にため池があり、そこがどうやら安定的な生息地のようで、そこから流れ落ちてくるようです。しかし、近くにゴミ処分場の計画があるそうです。ここもか、という思いです。
 掛川では早瀬さんはじめ、市の環境保全課の方も保全に熱心で、何とか現状を維持していけるよう、方策を探ってくださっています。

■愛知県美浜町のメダカ

 何度も生息情報をいただいている常連?の須田さん(愛知県知多市)から、美浜町に良好な生息地があるという情報をいただきました。美浜町といえば、「地元学」の推進など、環境の町づくりに力を入れている土地柄。環境庁が音頭取りをした「里地ネットワーク」にも加入しています。環境庁の「里地」の担当者が知り合いだったことから、町の参事の方を紹介いただき、お盆休み中に現地を訪問しました。海部郡でメダカの調査や保全活動をしている城(たち)さんにも同行していただきました。
 知多半島南部の美浜町は、低い里山と水田が広がる田園地帯で、見るからにメダカの生息には良さそうです。里山は保安林指定が多く、それで開発が進まなかったということでした。里山からのわき水・絞り水があり、海抜が低いことから流れが緩やかで泥がたまりやすいのが、幸いしたのでしょう。すでに圃場整備がなされている地区や、コンクリート水路にもかかわらず、メダカがいる場所があります。
 メダカ生息の中心となっている地区には、圃場整備の計画があり、それを何とか生態系保全型でやってほしいと申し入れましたが、町役場の整備担当者は「圃場整備をしないと農業が続けられない」、「今まで圃場整備をやったところでも、メダカがいる。圃場整備でメダカがいなくなることはない」、「一部に空石積み護岸などを考えている」という主張で、残念ながらそれ以上話は進みませんでした。美浜町の場合 は特別に条件が良かったということですし、それにメダカは何とか生きて行けても、水田生態系の質は大幅に低下しているはずです。
 町長は「弘法大師以来大きな手が入っていない田んぼだ」というのですから、それを活かしてもらいたいと思うのですが。
 引き続き働きかけをしていきたいと思っています。

■栃木県メダカ里親の会の調査に参加
 10月はじめ、メダカ里親の会会長・宇都宮大学水谷先生のご案内で、栃木県南部(小山市・佐野市・足利市)の数カ所の現地調査に同行させていただきました。
 今回はいずれもなかなか良好な生息地で、一カ所ではなんと数え切れないメダカが群れる用水路も発見。まだまださがせばいい場所があるものだと思っていましたが、最後に訪れた足利市の生息地は、北関東自動車道のインター建設とそれに伴う工業団地造成計画地で、すでにほとんどの用地買収も終了しているとのこと。
 もはやこの段階では、計画をストップさせることは事実上不可能で、いかに建設・造成用地内に保全地を確保していくかを検討していくしかなさそうです。地元保護団体とも連絡を取りながら、対応を探っていきたいと考えています。
小山市の水田地帯も、近くに入浴施設まで備えた大きな総合公園があり、その拡張予定地に入っているような節もあります。

■千葉県四街道のメダカ

 以前から情報を寄せていただいていた四街道市の小池さんから、市内のメダカ生息状況に関する情報をいただきました。10月末に小池さんと、市内で自然保護活動をされている任海(とうみ)さんお二人に案内していただきました。そのうち一カ所は春にメダカが確認されたという谷津(谷戸)奥の水田地帯で、大雨時に湛水してしまうので、それを流すために下流から深いU字溝に付け替えられていました。
 お二人を中心に、それを改善するよう市に申し入れを行っているところですが、市側の反応は鈍いそうです。今の水路幅の中で排水機能を高めるのは確かに難しいと思いますが、ここも休耕田・耕作放棄が目立つので、少なくともそういう水田に、遊水機能と生物相保全機能を持たせる方法もあると考えます。これは今後への期待を込めていうのですが、もし「生態系保全のための圃場整備事業」というものができれば、こういう場所の課題解決にはつながると思います。
 さて、四街道での最大のメダカ生息地は、すでに工業団地・住宅地の造成が進んでいました。山肌は削られ、谷が埋め尽くされ、赤い地肌がむき出しになっています。かろうじて残されることになった地区内の神社は、周囲が削り取られまるで浮島のよう。たまたまフクロウがカラスの群に追われるところを見ましたが、ここには住めないと引っ越しの準備だったのでしょうか。他に行く当てがあるとも思えないけれど・・・。
 任海さん自身が農家で地区内に農地を持っておられるので、そこを保全地として使う予定で、また、工業団地内に予定されている広大な調整池をビオトープにする提案もしているそうです。詳しくは任海さんのホームページ
http://www.bekkoame.ne.jp/~s.tomi/
をごらんください。

■メダカは社会的生物である

 今回の現地調査でいくつかのことが見えてきました。
 それは、メダカが生き残っている場所には「社会的な」理由があるということです。
圃場整備が入った水田地帯では、条件がたまたまよい場所をのぞいて、ほぼ間違いなくメダカがいなくなっています。つまりメダカが生き残っているところは圃場整備未実施(昭和30年代までの用排分離だけの圃場整備ではその限りではない)の場所です。
 では、なぜ圃場整備がなされなかったのかを考えてみると、おそらく過去に何らかの開発計画・構想の線引きがされているのではないかということが予想されます。
 小田原の生息地もそうです。よく調べてみると、「開発計画があったから生き残った」というケースが少なくないのではないでしょうか。これは今後調査を進めるにあたって、ぜひ加えていただきたい項目です。
それ以外では、土地条件が悪くコストがかさむなど、圃場整備のメリットがないと判断された場合です。この場合は、当然農業が存続するかが問題になります。事実、そういう場所では耕作放棄が目立ち、水辺の管理もできないため水辺そのものが失われつつあります。ゲンジボタルやホトケドジョウなど湧き水のある細流を好む生物も、このような環境を生息地としていますが、やはり耕作放棄・管理放棄で追いつめられつつあります。
 このような場所は、残土捨て場になったり、廃棄物の処分場として使われるおそれもあります。
 そういう意味ではメダカというのは、繁栄も絶滅も人間の活動に大きく左右されている、社会的あるいは文化的な存在であるとあらためて思います。なんというか、メダカが生きていけるような文化を私たちが残していけるかどうかを問われているのではないか、そんな気がします。
 どちらにしろ、全国的に非常に危うい状況にあることは間違いありません。次善の策あるいは緊急避難としての「ビオトープ」、「ミティゲーション」(どちらも日本では「開発の免罪符」として期待されている面がありますが・・・)という手法はあるにしても、それで解決するわけではないと思います。やはり社会のありようが変わっていく必要があるのではないか、そう思えてなりません。
 山形県余目町の例のように、学校教育と組み合わせていくことで保全が図れる可能性もあります。いろいろな方策を検討していきましょう。
 全国で活動するみなさんにとって、地域での仲間とともに、全国レベルで活動の経験や知恵や技術を交換し合うこともこれからとても大切だと考えています。今は「めだかネット事務局」が中心になって情報を集約・発信しているわけですが、今後は本来の中心のない「ネットワーク」づくりを考えています。
 一つはインターネットを使った情報交換の場を用意していきたいということと、近いうちにシンポジウムのような形で、メダカの保全活動だけでなく、農業生態系の保全や地域の自立、環境教育の視点を含めた議論と情報交換の機会を設けることができたらと思っています。
 非力な「めだかネット事務局」としては、思いはあってもなかなか実行に移すことができません。みなさんのご協力をぜひよろしくお願いいたします。


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