余目でメダカSOS救出作戦
田富町のメダカシンポ
市民によるメダカ公園づくり
ギンブナ減少の原因?
ほか
第5号
2001.11.14発行(通算6号)

小学校高学年以上

 今年もメダカ調査には、多くの人が参加してくださいました。各地でさまざまな取り組みが始まっています。小さな一歩でも、社会を変えていく力になる、そう信じて・・・。

めだかネット事務局 小澤祥司


今号の話題
■山形・余目で「メダカSOS救出作戦」

■山梨県田富町で「メダカシンポジウム」

■富士吉田市の明見湖で市民による公園づくり

■土地改良法が改正に

■ギンブナ激減の原因?

■書籍紹介:『ちょっと待ってケナフ! それでいいのビオトープ?』

■今年のメダカ調査結果


■山形・余目で「メダカSOS救出作戦」

 9月9日(日)、山形県庄内地方の余目(あまるめ)町で、「メダカSOS救出作戦」と名付けられた、イベントが実施されました。
 余目には、広い面積にまだメダカが生き残っている水田地帯がありました。この一帯は江戸時代初期に、北館大学助利長によって開削された北楯大堰からの農業用水によって潤されている、広大な穀倉地帯です。
 2年前、余目第一小学校の5年生が授業で地域のメダカしらべを行ってみると、縦横に広がる土水路にたくさんのメダカが生息していました。
 しかし、この地区でも、すでに圃場整備の計画があり、土水路は暗渠やコンクリート排水路に変わり、メダカだけでなく、生き物がすめなくなってしまうことが明らかになったのです。
 この日は秋とは思えない強い日射しと気温の中、朝から児童・PTA・土地改良区や県の職員など約300名もの人々が参加して、作業が行われました。中学生になった当時の5年生も、駆けつけました。主催者からの説明の後、おのおのが持ち寄ったたも網やさで網で、水路をすくいメダカをはじめとする生物を捕獲、あらかじめ造成しておいた仮の保全池に移しました。
 この日捕獲された魚は、メダカの他、ギンブナ、タモロコ、モツゴ、オイカワ、ドジョウ、タイリクバラタナゴ、ヤリタナゴの7種類。他に、ドブガイ、タニシもとれました。来年ほ場整備区域内に保全池を造成し、あらためてこれらの生物を移植する予定です。
 この日の救出作戦で大活躍したのは、お父さん、おじいさんたちでした。子どもたちは最初こわごわ、遠慮がちに網を差し入れていましたが、「昔取ったきねづか」で夢中になる大人たちにつられて、いつしか泥んこになる子も。
 「昔はこんなふうに魚を捕って遊んで、あっという間に一日が暮れたもんだよなあ」
子ども連れの男性が、懐かしそうに話していました。

 ほ場整備工事が完成すると、開水路の面積はこれまでの20分の1になってしまうそうです。保全池の他に、メダカはじめ水生生物が生息できる水路を残していくことも決まっています。子どもたちの思いをどう受け止め、実現していくか、地元では真剣な話し合いが続いています。

 詳しい経緯は、余目第一小学校・後藤先生のメダカのページ
 http://www5a.biglobe.ne.jp/~medaka1/
 に紹介されています。


■山梨県田富町で「メダカシンポジウム」

 山梨県田富町は、富士川の支流である釜無川、笛吹側の合流点にあり、かつては沼地や湿地帯の広がるところで、近年までミヤイリ貝を中間宿主とする住血吸虫の感染地帯でもあったそうです。
 11月11日に、この田富町で「やまなしメダカシンポジウム」が開催され、私も話題提供者・コメンテーターとして招かれ、行ってまいりました。
 シンポジウムを主催したのは田富町をフィールドに活動する「まちづくり時習塾」という団体。時習塾は、「まちなか水族館構想」として1995年にスタート。「めだかの里」や「めだか広場」づくり、小学生たちとの古代米の栽培、自然観察会や学習会などを実施しています。
 シンポではパネルディスカッションの後、人と生き物が共存できる豊かな地域を後世の子どもたちに伝えていくことをめざして「メダカ宣言」が採択されました。


■富士吉田市の明見湖で市民による公園づくり

 拙著『メダカが消える日』にも紹介させていただいた「めだかの学校・山梨」(代表・勝俣源一さん)。絶滅寸前だった地域のメダカの保全や、地区にある明見湖(蓮池)の環境をよみがえらせるための働きかけを行って来た同会の活動が実り、昨年、住民150人の参加で「明見湖保全整備検討委員会」が発足しました。
 水質悪化やブラックバスの放流などで激変した明見湖の環境をかつての姿に戻すため、地下水を汲み上げて明見湖を浄化する計画で、今年3月には公園として市が借り上げた湖畔の用地で、住民の手づくりにより水質浄化や生物の生息のための環境整備が行われました。めだかの学校で育ててきたメダカも公園内の池に放流されました。
 メダカ保護を通じた勝俣さんたちの思いが、大きな広がりとなり、地域づくりにつながったわけです。たいへん意義深いことだと思います。


■土地改良法が改正に

 食糧・農業・農村基本法の施行に伴い、今年7月に土地改良法が改正になりました。
 主な変更点は、事業実施にあたって「環境との調和への配慮」が加えられたこと(第1条)、事業計画の策定にあたってこれまでの「市町村長の意見聴取」を「市町村長との協議」に改めたこと(第5条、第85条等)、国県営事業については計画概要の公告を行い、意見書の提出が可能になったこと(第85条等)、などです。


■ギンブナ激減の原因?

 前号で、農業用水路からフナの姿が消えているのは、地域水系との連系が失われたためではないかという話を書きましたが、先の「やまなしメダカシンポジウム」で、やまなし淡水魚研究会の村松正文氏から重要な指摘をいただきました。
 ご存じの方も多いと思いますが、日本の平地域に普通種であるギンブナは3倍体で、メスしかいません。メスだけで単為生殖を行うのです。ところが、卵の発生には、他種の魚類の精子の刺激が必要なのです。村松氏は、ナマズが産卵するわきで、ギンブナが産卵しているところを観察しています(この写真は山梨日々新聞社刊『山梨の淡水魚』に掲出されています)。
 つまり、ギンブナは他種の魚の産卵に合わせて産卵している可能性があります。ナマズやドジョウなどの魚が水田地帯で産卵することができなくなった(あるいは数が少なくなった)ことが、ギンブナの繁殖にも影響を与えているのではないかというわけです。


■書籍紹介:『ちょっと待ってケナフ! それでいいのビオトープ?』

 上赤博文著 地人書館発行 1800円+税(2001年11月16日発行)

 環境教育の教材としてケナフ栽培や「ビオトープ」づくりが注目されています。私も前からケナフには、ちょっと待てよという思いを持っておりました。「栽培するだけで環境が良くなる」みたいな話になりかけていたからです。「ビオトープ」も同様。池を掘ればシオカラトンボやアキアカネはやってきます。でも、それだけで自然が豊かになったわけではない。ましてや、本来の地域の環境と関わりなく、水辺をつくり、よそから持ってきた植物を植える、あげくは買ってきたメダカを放しても、それはビオトープという考え方とは全く異なるもの。そればかりか、このような活動が地域の生物や生態系に悪影響を与えることも考えられます。
 筆者は、幅広く情報を集め、本質を理解しないまま進められる環境学習、自然学習における問題点を指摘し、どうすればよりよい学習につなげられるかを提案しています。
佐賀県教育センターに勤める筆者は私と同世代で、おそらく子どものころは自然の中で同じような遊びをしていたんだろうなあと共感を覚えました。
 教職員だけでなく、自然保護や環境保全、まちづくりに関わるボランティア、自治体職員にもぜひ読んでいただきたい本です。


■今年のメダカ調査結果(2001.4月〜12月)

千葉市 飛田将基くん 市内の用水路での生息情報
滋賀県近江八幡市「メダカの学校小田分校」 瀧口喜三男さん 市内農業用水路での生息情報
群馬県館林市 横内功さん 埼玉県嵐山町内での生息情報
同上 埼玉県行田市内での生息情報
福岡市 別府通智さん 福岡市内の公園での生息情報
同上 福岡県古賀市での生息情報
同上 山口県萩市内の生息情報
同上 山口県楠町内の生息情報
北九州市の教員の方から休耕田を利用したメダカ保全活動「小嶺水辺の教室」の情報
島根県 浜田明美さん・田中礼子さん 島根県大社町内の生息情報
内藤和夫さん 千葉県市原市の生息情報(ブラックバスの群れがすでに侵略か?)
三重県嬉野町 脇葉進さん 町内の生息状況をお知らせくださいました
茨城県ひたちなか市 小石川誠さん 市内農業用水路での生息情報
滋賀県彦根市 金尾滋史さん 市内の生息情報
石橋恵理さん 茨城県五霞町内のコンクリート水路での生息情報
三重県津市 紙谷智樹さん 三重県楠町内での生息情報
横浜市 川手宣美さん 鶴見川本流感潮域のヨシ帯
埼玉県桶川市 三好悦史さん 台風の後市内水田での生息情報
佐賀市 家永英司さん 自宅裏の水路に生息
東京都杉並区 武藤卓さん 長野県中野市内(千曲川支流)での生息情報
熊本県上益城町 森永大輔さん 益城町内の生息情報
東京都小金井市 きだけんたくん 小金井市内の公園での生息情報

ありがとうございました。


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